学生生活

学問の制限を超えて、新しい社会学へ

プルサコワ, アリナ
社会学研究科 社会学専攻
博士課程3年(2021年度現在)

私は学部時代から社会学を専攻しており、修士課程から慶應義塾大学の社会学研究科に進学を決めました。初めて本格的に学問に触れたときから、その奥深さと面白さを感じながらも、限界と制限も痛感しました。「多様性を持つ学問とは何か」という疑問を念頭に置きながら、修士課程から新しい学問のあり方の実現に挑戦しているアートベース・リサーチの研究を始めました。これはアカデミックな世界で主流となっている文字媒体の制限を超えて、リサーチの結果はもちろん、リサーチのすべての過程においてアートを用いることを試みている研究スタイルであります。写真、映像、演劇、パフォーマンス、サウンドやインスタレーション、あるいは文字であったとしても小説や詩など、従来の学問において研究対象にしかなり得なかったものは研究そのものになり得ます。理性よりも感情に訴えかけるエモーショナルな社会学の到来です。その先にある未来を想像して、諦めず自分の研究を慶應義塾大学の社会学研究科で続けるつもりであります。

探究心を温かく迎えてくれる学び舎

末廣 彬
社会学研究科 教育学専攻
修士課程2年(2021年度現在)

私が大学院に進学した一番の動機は、教育について学問として、より深く考えたいと思ったからです。そう考えた私を懐深く迎え入れてくれたのが、慶應の社会学研究科教育学専攻でした。
私自身、慶應には3度お世話になっています。1度目は法学部法律学科を卒業し、そのまま会社勤務を始めました。その後、大学時代の趣味が高じてプロの音楽家を目指し、音楽を教えるという行為から人に教えることに興味を持って、教職特別課程に入学したのが2度目でした。そして、社会科の教員となって働き始め、そこで生じた「よい教育とは何か」という問いをじっくりと考えてみたいという希望から、退職して文学部の教育学専攻に学士入学したのが3度目です。卒業に当たっては教職への復帰も考えましたが、大学院に進むことで得られるより専門的な学び、特に教育の本質を探究するという慶應の教育学専攻の魅力は非常に大きく、進学を選択しました。現在は、高度に専門的な研究に四苦八苦しながらも、充実した日々を送ることが出来ています。
振り返ってみると、学びたいと思ったときにそれを温かく迎え入れ、受け入れてくれる環境が慶應にはあると感じています。大学院では、そこに一際強い探究心が求められると思います。学びたいという気持ちが強くわいてきた人は、是非、慶應でともに学びましょう。

鳥脳と霊長類脳の機能と構造のパラドクスを解き明かす

盛田 一孝
社会学研究科 心理学専攻
修士課程2年(2020年度現在)

私は学部時代から現在の研究室に所属してカラスの行動と脳の研究を行っています。私たちが普段町で見かけるハシブトカラスを含め、カラス類の鳥類は非常に「賢い」動物と知られています。例として、道具作成や道具使用、貯食行動でのいつ・どこ・何の三要素が含まれたエピソード様記憶、さらに貯食防衛行動に見られる他個体の知識理解能力などがあり、これらは過去に霊長類しか示さない認知能力とされていました。認知の中枢と考えられる脳はカラス類と霊長類でともに体に対して大きな大脳を持つ一方で、大脳の構造は両者で大きく異なります。カラス類と霊長類での異なる脳構造にもかかわらず、どうして類似した認知機能が果たせるのかが私の研究の興味です。
本学では自らの専門知識と技術を磨き、研究を行う上で非常に恵まれた場所です。豊富な資料と研究機材が利用でき、自ら疑問に思ったことはすぐに調べ、実際に自分で手を動かすことで、生きた知識を身につけることができます。さらに本研究科では自分の研究室のゼミのほかに、他研究室のゼミに出席することもできます。異なる分野から意見をもらうことで、自分一人では得られない気づきや考え方に触れることができ、より自分の分野に対する理解を深めることにつながります。自ら現象に対して問いをたて、実験し、結果を分析して世界に発表する一連の研究のプロセスは知的好奇心を満たし、ほかでは得難い非常に充実した経験です。ぜひ本研究科で興味のあることを一緒に学びましょう。

自らの研究をより多様な観点から捉える

清水 優菜
社会学研究科 教育学専攻
博士課程3年(2020年度現在)

私は修士課程まで他大学に在籍し、博士課程から社会学研究科教育学専攻に入学しました。なぜ、博士課程から慶應義塾に来たのか。それは、自らの研究テーマである「数学の問題解決における動機づけや感情の機能」を教育心理学のみならず、広く「教育学」や「社会学」、「心理学」の見地からブラッシュアップできると考えたからです。
本学の研究環境には、大きく3つの特長があります。1つ目は、自らの研究についてディスカッションする機会が多いことです。指導教員や研究室のメンバーだけではなく、研究領域や分野が大きく異なる方とディスカッションするため、より多様な観点から自らの研究を捉えることができます。2つ目は、「教育学」だけではなく、「社会学」や「心理学」、さらには自らの興味がある他学部・専攻の講義・演習を履修できることです。様々な分野の研究動向や手法を習得できるため、より多角的な研究へのアプローチが可能になります。3つ目は、図書館が充実していることです。書籍やジャーナルが充実しているので、文献調査をしやすい環境にあります。
最初はわからないことや戸惑うことも多いかと思います。しかし、本学は研究環境がとても充実しており、周りから手厚いサポートを受けることができます。探究したいテーマのある人は、是非本学で共に探究しましょう。

私が、なぜ「私」であり続けられるのかという探求

島根 大輔
社会学研究科 心理学専攻
博士課程3年(2019年度現在)

私はたまに、朝起きたら別人になっていることを妄想します。しかし、何度寝ても私は「私」のままです。なぜ、私は「私」であり続けられるのでしょうか。これには、人間の記憶という機能が関係します。"高校の文化祭で友達と協力し合った"などの過去の記憶は、今の「私」を形作ります。一方で我々は、経験したことの無い事柄について、経験したような記憶違いをすることがあります。人間の記憶において興味深いことの一つは、この虚構の記憶でさえ、「私」を形作る要素になり得るということです。私は、「私」を形成する記憶のメカニズムを、虚構の記憶という現象を元に調べています。
本学には、研究の遂行にあたり、3つのメリットがあります。第一に、研究設備が充実していることです。人間の行動の定量的な測定、生理測定、脳神経反応の測定機器などがあり、一つの現象への多角的なアプローチが可能です。次に、コミュニケーションの輪が広いことです。指導教員や先輩との議論、他の研究室との共同研究、他研究科や他大学との連携などによって、幅広いサポートが受けられます。最後に、研究成果を発表する風潮があることです。私は去年、国内外合わせて6件以上の研究発表をしました。この風潮が競争心を生み、より良い研究へのモチベーションに繋がっています。
人の心の未知なる部分を探究することは面白いことです。本学には、そのための環境が十分に揃っています。興味の一端を重んじ、極限まで追究したいと思える人には、自らの欲望を発揮できる魅力的なフィールドです。共に学びましょう。

多様な他者と学び、興味のある物事を追究する

セリーワッタナウート,ラクサミー
社会学研究科 社会学専攻
修士課程2年(2019年度現在)

大学の学部では法学部に在籍し、本大学で法律を勉強していました。しかし、法律を勉強しているうちに、様々な社会現象と法学部の知人の話を見聞きして、今まで目を向けていなかった社会心理学とジェンダーの分野に関心をもつようになりました。特に、私はゲームが好きなので、ゲームとジェンダーについて研究するために、社会学研究科に進学しました。
私が現在取り組んでいる研究では、ゲームに登場するキャラクターの描写が、LGBTの方々への態度および認識に対して、どのような影響(関係性)を与えるのかを調べています。ゲームに登場するキャラクターの内容分析などの手法を用いています。
私が所属する研究室では、毎週のゼミで学生が研究の進捗状況を発表し、指導教授と先輩方、そして同期からたくさんの意見がいただけます。それによって、多様な観点から自分の研究を捉えることができるようになり、自分が今まで考えたことがないことに気づかされることも多々あります。本研究科の環境は、研究を進める上でも専門知識を深める上でも、また自分自身という人間が成長する上でも非常に適した環境だと思います。
大学院は学部と違い、自主的かつ積極的な態度が求められるので、ときには大変さを感じることがあると思います。しかし、その中で仲間と楽しく学んでいき、自分の知識的好奇心も満たしていくという充実した経験もできると思います。ぜひ、本研究科でともに困難を乗り越えて興味のあることを研究しましょう!

学究的な環境


社会学研究科 教育学専攻
修士課程2年(2018年度現在)

大学(学部)では日本語専攻で、日本語をはじめ、日本の社会や文化などを勉強していました。勉強すればするほど日本に対する関心が深くなり、卒業後は日本へ留学し、学究的な雰囲気の中で大学院生として研究していきたいと思いました。慶應義塾大学は有名な私立大学で、研究レベルの高い先生方がたくさんいらっしゃいます。教育・研究の資源が豊かで、学習する環境がとてもいいと感じられ、進学することを決めました。
大学院は学部のときより授業数は少ないですが、目的意識を明確に持ち、自分で計画をたて、研究を進めることができます。常に自主的かつ積極的に動くことが重要だと感じています。ゼミでは、定期的に研究の進捗を報告します。先生方や先輩は親切で、丁寧に指導してくださいます。貴重な意見をいただくことができ、専門性の高い知識を持った仲間と学びを深めていくことができるこの環境は大変恵まれていると日々実感しています。研究の過程で得られるもので自分が磨かれ、それが自分の持ち味になってくると思うので、大学院でしかできないアカデミックな経験をたくさん積んで今後のキャリアに活かしていきたいです。
外国で生活や勉強をすることは、一人で成し遂げられることではありません。これからも、たくさんの方々の支えで自分が大学院で勉強できているということを忘れずに頑張りたいと思います。
ぜひ社会学研究科で、一緒に楽しく充実した大学院生活を送りましょう!

思い込みに直面し、痛みのただなかで考え続ける

中村 香住
社会学研究科 社会学専攻
後期博士課程3年(2018年度現在)

私が取り組んでいるのは、秋葉原における〈性の商品化〉の一形態としてのメイドカフェにおける女性主体の経験の研究です。研究方法としては、秋葉原のフィールドワークとメイドカフェで働いていた女性へのインタビューを行っています。その分析を通して、女性身体と市場の関係性についてネオリベラリズム以後の状況を考え、第三波フェミニズムの新たな地平をひらくことが目標です。
私が所属する研究室では、毎週のゼミで、指導教員の専門であるアートベース・リサーチのプロジェクトに取り組むとともに、学生一人ひとりの個別の専門分野について自由に研究発表をして皆で検討する時間が設けられています。外国人留学生も多数在籍しており、ディスカッションが多言語で行われる時もあります。多様な背景を持った学生が集まっているので、思わぬ視点に気づかされることも多々あります。
人々が「取るに足らないこと」と一蹴してしまいがちな物事にどうしようもなく引っ掛かりを感じて、原理的に考えようとせずにはいられない、そんな人に大学院は向いていると思います。学問、特に社会学は、自分を解放してくれます。研究を進めれば進めるほど、自分の思い込みに直面させられますし、それは時に痛みを伴う経験かもしれません。しかし、その痛みのただなかにこそ、自由と解放の契機があると思います。こうした営為を自分にとって切実で大切だと感じる人は、本研究科でともに学びましょう。

現職教員として入学して

井上 俊恵
社会学研究科 教育学専攻 2008年修了
群馬県立高校 教諭

教員として働き出してちょうど10年経ったとき、私は自分の立ち位置が分からなくなっていました。他者から職業を聞かれれば、県立高校の英語教員となるのでしょうし、その仕事の価値を問われれば、生徒の人格形成と彼らの望む進路実現に寄与できることとなるのでしょう。しかし教科書や指導要領に書かれていること、学校文化として当たり前のように生徒に伝えていることに、果ては自分が身を置く学校そのものに私は疑問をもつようになりました。同時に、社会で成人として生活する中で自分自身に向き合わざるを得ない場面も多々あり、自分自身のアイデンティティも揺らいでいました。
そこでそのモヤモヤに向き合うために選んだのが慶應の社会学研究科でした。なぜここでなければいけなかったのか。休職制度を利用しての制限・条件に見合っていたことはもちろんですが、何より教育を社会学の中に位置づけているおもしろさがありました。
当初私が立てた問いは、「ジェンダーと教育」というものでした。しかし、社会学研究科という大きな枠組みの中で多角的に自分の関心に向き合う中で、そして卓越した教授陣と仲間に揉まれ追い込まれる中で、最終的には「批判的教育学の見地からの教員と生徒の関係性」について論文を書くことになりました。入口の関心と出口の論文は、私の中ではしっかり繋がっています。性の枠組みの捉え方やそれに付随する価値を他者に教えるとき、仮に教える側がいかに「公正」で「全う」な理論に辿り着いたとしても、抑圧者(教員)vs.非抑圧者(生徒)という関係性の中でその伝達が行われるとき、果たしてそれはどんな意味をもつのか。伝達される側が批判的に知識に対峙できること、さらには伝達する側も批判的に自らの知を問い続けることの重要性をHenry A. Girouxの文献を中心に考えたつもりです。
現場に戻るに当たって、私のモヤモヤはなくなるどころかより一層大きくなりました。もちろん答えなんて出ません。しかし、慶應で培った「物事を考えるスキル」、「教育を問い続ける姿勢」がある限り、もうこのモヤモヤは嫌ではないのです。

三田で学ぶ意義

大西 慎二
社会学研究科 教育学専攻 2015年修了
香川県公立小学校 教諭

私は大学院修学休業制度を用いて一年目は東京で修了単位を修得し、二年目は土曜日に設定していただいたゼミに出席するために金曜日の仕事の後に東京へ向かっていました。
現職教員として入学しますが、ここでは自分の研究を学問として科学的に実証する一人の研究者として扱われます。その心地よさこそが、まさに私が心底求めていた環境でした。
従って、自分の研究に近い海外の論文を全文和訳して発表し、その内容について先生方や院生と討議する授業にも臨むなど、仲間と同様のカリキュラムで単位を修得しながら、自らの研究を進めていきます。教育測定方法や心理学統計など自分に足りない能力も学部の授業を受けて補える点も魅力でしたし、学位論文を執筆する際には先生方のみならず、一回り年下の博士課程の友人にも大変お世話になりました。
また、研究とは別に首都圏や東北の諸学校の授業参観にも30校余り訪れたり、単位交換制度を利用して毎週月曜日は早稲田へ赴いたり教育界での人脈が広がったことや、福澤諭吉記念文明塾に通い、民間企業の社会人と活動できたことも一生の財産となりました。このように三田には自由な学びと人と人の交流が満ち溢れています。
学校現場に戻った今では、教師としての経験則だけではなく、蓄積された研究者の知を活用すべく学術論文にも当たりながら「生き物である教育」にアプローチできるようになってきた気がしています。

専門性を磨き、学際的な知見を育む環境

髙瀬 友里恵
社会学研究科 社会学専攻
修士課程2年(2017年度現在)

私の研究テーマは「事実婚をめぐる言説の歴史社会学」です。具体的には、"法律婚ができないやむを得ない事情"に基づく選択として捉えられていた事実婚(内縁)が、1980年代を境に"法律婚にかわる一つの生き方"として捉えられ、語られるようになった経緯と背景を言説分析によって構築主義的な視座から紐解いていく研究を進めています。
本研究科社会学専攻はゼミ形式の授業がほとんどで、私は主に家族を対象とした研究を行っている先生のゼミを履修していますが、一口に家族研究と言っても対象やアプローチは多種多様にあるため、それぞれのゼミごとに、先生や先輩方の研究内容を反映した多角的なアドバイスや知見を得ることができる環境下にいます。また、少人数制で、研究対象のみならず在籍年数や年齢も多様な方々から構成されるゼミであるため、ゼミ員の間でフランクに行われる意見交換も、多角的な知識や考え方を相補的に摂取できる貴重な場となっています。
同じような分野やアプローチを専門とする先生や先輩方のもと自身の研究の専門性を高め、同時に、その専門性の中への閉じこもりを防ぎ、広い視野や知識を持つことを可能にするこの環境は、私自身が理想とする、専門性と学際性を兼ね備えた、バランスのとれた知見を有する研究者を志すに最適の環境と言えると確信しています。