特集記事

グローバルに通用する研究者を目指して

2016.05.18

英語プレゼンテーションのためのワークショップ
ゲスト講師・竹ノ下弘久(上智大学総合人間科学部社会学科教授)

慶應義塾大学大学院社会学研究科では、インターナショナルな研究者を育成するために、英語でのプレゼンテーション能力を高めるワークショップを随時開催しています。
今回のワークショップでは、講師として上智大学総合人間科学部社会学科の竹ノ下弘久教授を招聘し、実践的な英語プレゼンテーションの技法のレクチャーを受け、その上で学生たちが実際に英語でのプレゼンテーションを行うという流れで授業が展開されました。もちろん、その間の質疑応答も含め、発言は全て英語。今後の国際会議で活躍するための実践力向上を目指しています。

英語プレゼンテーションの基本

まず竹ノ下教授のレクチャーでは、いまなぜ英語が必要なのか、プレゼンテーションの技法について学びます。

「今回のワークショップは、国際的な学会の場で英語によるプレゼンテーションや質疑応答ができるようになるために、実践的なノウハウを身に付けてもらうことを目的としています。世界各地で開催される国際学会には世界中の研究者が参加するので、多様な価値観や考え方を学べます。自分の見聞を広げるためにも、海外での国際学会に参加することは非常に重要です。
社会学の学会で最大規模のものは国際社会学会 International Sociological Association(ISA)で、4年ごとに開催されています。日本社会学会 The Japan Sociological Society(JSS)は、アメリカ社会学会 American Sociological Association(ASA)に次いで、世界第二の規模になります。JSSは日本で開催されますが、英語でプレゼンテーションをすることも可能です。アジア社会学会Association for Asian Studies(AAS)はアジアに特化しているために、アジア間の社会学の比較研究に向いています」

「プレゼンテーションの手法には、パワーポイントを使った口頭のプレゼンテーション、ポスターを使ったプレゼンテーション、ラウンドテーブル(円卓会議)式のプレゼンテーションの3種類があります。スライドやパワーポイントに合わせて順番に説明していくプレゼンテーションに比べ、ポスター式のプレゼンテーションでは、オーディエンスと直接コミュニケーションを取るため、その都度話の内容や専門の程度が変わってきますし、時にジョークを交えるなど、臨機応変に対応できる英語力が問われます。
一方、ラウンドテーブル式のプレゼンテーションは、5~6名の発表者がテーブルに着いて、スライド等を使わずに順番に口頭で発表するのですが、各自に割り当てられている発表時間を守る必要があります。これは日本語でもオーバーすることが多いのですが、英語だと予想以上に時間がかかり、最後まで発表できないことがよくあります。事前に話す内容を簡潔にまとめておき、滞り無く話し切ることが重要です。パワーポイントを用いたプレゼンテーションでは、報告時間1分につきスライド1枚程度と考えておくとよいでしょう。
いずれのプレゼンテーション・スタイルでも、発表者は抑揚やアクセントに気を配りつつ、聞き手に理解してもらえるような話し方をすることが肝心です」

この竹ノ下教授のレクチャーを元に、授業の後半では、社会学研究科の学生3名が、各自の研究テーマについて、パワーポイントを用いながら、英語でプレゼンテーションを行いました。各プレゼンテーションが終了した時点で、竹ノ下教授や参加者から質問があり、それに対して発表者が回答する流れで授業は進みます。このようなワークショップを経験することで、将来、国際的な会議でのプレゼンテーションもスムーズにできるようになることを目標としています。

学生たちによるプレゼンテーション

ここで実際に学生たちが発表した内容の要旨を日本語でご紹介します。

多文化共生を妨げるもの
山本直子君(博士課程3年)

「日本に住む外国人のうち、ブラジル人は、中国人、韓国人、フィリピン人に次いで多く、4番目となっています。日本で最も多くのブラジル人が定住しているのは愛知県豊田市です。市内にあるH団地では住民の半数近くがブラジル人で、ブラジル人のコミュニティがあります。彼らは日本人とは生活感覚が違うために、ゴミ出しや違法駐車、騒音などの問題で、日本人住民と対立することも多く、異文化共生の難しさを物語っています」

スウェーデンの労働市場における、
スウェーデン人および移民第二世代間の格差

玉川朝恵君(修士課程1年)

「スウェーデン政府は移民や難民に対して非常に寛大で、彼らへの支援を惜しみません。スウェーデン社会において、移民が労働市場に編入されていることは非常に重要です。しかし、現実には大きな労働格差があり、その陰には、人種差別の問題が潜んでいると考えられます。スウェーデンで生まれ育った移民第二世代の中でも、ヨーロッパ諸国出身の親を持つ移民第二世代やスウェーデン人らと比べて、非ヨーロッパ諸国出身の親を持つ人たちの失業率の高さが問題になっています。非ヨーロッパ諸国出身の移民がスウェーデンに押し寄せるようになったのは比較的最近の話で、彼らに焦点を当てた研究はまだほとんどありません。このような労働格差がなぜ起こるのかを、1970年以降にスウェーデンに入国した親を持つ移民第二世代から考察することが、今回の研究のテーマです」

非正規雇用者が見出す
ボランティア活動の意義

吉武理大君(修士課程1年)

「働きながらボランティア活動を行っている、非正規雇用者を対象とした聞き取り調査をもとに、彼らの家族背景、心身の健康、教育的背景および仕事における困難や社会的排除の問題、そしてボランティア活動と仲間への思いなどについて考察をしました。その結果、ボランティア活動をすることによって、非正規雇用者の方々が抱えている問題や孤独感の一部が癒されているという事実が判明しました」


竹ノ下弘久(上智大学総合人間科学部社会学科教授)

慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。
日本学術振興会特別研究員、慶應義塾大学多文化市民意識研究センター研究員。
静岡大学人文学部准教授を経て現職。日本社会学会研究奨励賞を受賞(2008)。